介護保険制度改定 ここが問題

体を面にあずけることで安定させ利用できるトイレ

 

介護の社会化を目的とした介護保険制度ですが、最近の見直しでは財政面から、利用者の範囲の縮小や自己負担の拡大が検討され、当初の目的とは逆行しているのではないかと受け止めざるを得ません 。2024 年も見直しの年となっており、どのようなことが検討されているのか、どんな課題があるのか、 生活クラブ運動グループ・インクルーシブ事業連合で行われた日本ケアマネジメント学会理事 、NPO渋谷介護サポートセンター理事長 、服部メディカル研究所所長 、看護師・社会福祉士・主任介護支援専門員である服部万里子さんの講演を紹介します。

 

★介護保険の現状

・介護保険利用の高齢世帯は独居、老夫婦世帯が主

・要介護の原因:認知症、脳梗塞、老衰⇒高齢になれば、誰もが介護が必要になる可能性

・誰もが介護が必要になれば保険でサービスを使い、自分らしく最期まで生きられるように支援するのが介護保険制度

・市町村の認定で初めて介護保険が利用できる

・そのために40歳から介護保険料を払い続けている

 

★改定が検討されている内容と問題点

○利用者の自己負担2割の範囲の拡大⇒利用控えにより、介護度の悪化に

・現在、自己負担は原則1割、例えば単身者で年金収入のみの場合、年収280万円以上340万円未満の人は2割、340万円以上の人は3割

 

○施設などの家賃と食事代について、預金が単身で1千万、夫婦で2千万以上ある人には負担を求めているが、不動産や宅地も対象にする⇒利用控えにより、介護度の悪化に

 

○ケアマネジメントの有料化⇒利用者負担となることで介護サービス自体の利用控えに

・ケアマネジメントは利用者や介護者からの相談、サービスの説明、サービス導入サポート、ケアプランの作成、利用者の自立支援を行うソーシャルワーク

・ソーシャルワークに自己負担はありえない(児童相談や障がい相談、貧困相談も無料)

・ケアマネジメント料は介護保険サービスを利用した場合に、介護保険から事業者に支払われるしくみ

 

○要介護1・2(介護を受けている人のうち、37%程度)の訪問介護、通所介護を市町村事業に移行⇒報酬が少ないため担う事業者がおらず介護難民に

・現在、要支援1・2(介護を受けている人のうち、28%程度)の人が市町村事業でサービスを受けているが、今もサービスは足りていない状況

 

○介護認定の有効期間の延長

・新規申請及び区分変更でそのときの状態に応じ介護度が決定するが、その有効期間を延長⇒状態が悪化した場合には必要なサービスが受けられない恐れ

 

○サービスの複合化

・看護小規模多機能型居宅介護は、主治医との密接な連携の下、通い・泊まり・訪問を利用者の状態に応じて柔軟に提供し、退院直後の利用者や看取り期など、医療ニーズの高い中重度    の要介護者の在宅での療養生活を支えているが経営が成り立たず、事業所が増えない。⇒サービス利用機会の拡充を図るためにどのような地域であっても必要な方がサービスを利用しやすくなるような方策やさらなる普及を図るための方策について検討する必要

・在宅生活に欠かせずヘルパーの専門性が必要な訪問介護は報酬が低いため、担う事業者が少なくサービスが足りないにもかかわらず、デイサービスの人材をあてればいいと考えられている。

年々増加する介護給付やサービスを減らすための検討であるため、今回の改定には入らなくても、次回以降の改定には反映される可能性が高いと考えられます。変更によりむしろ介護度が悪化し、結果的に介護給付が増えるのではないか、それだけでなく家族の負担が増え、介護離職が増えるのではないかと考えます。講師の服部さんも「現場のことを知ってもらうことが必要で、現在の国の検討会議には在宅介護の現場のことを伝えられる人がいないことが問題」と指摘されていました。