ケアラー支援は家族まるごと支援で

生活者ネットワークは、「子育て介護は社会の仕事」と訴えてきました。子育てや介護というケアはだれかのワンオペや家族だけでなく、社会全体で担うものと考えます。そのためにもプロやボランティアによるケアを受けることをあたりまえにするとともに、家族としてケアをするケアラーがケアをしながらも自分らしく生きていくことを支えるしくみが必要です。

そのしくみとしてのケアラー支援が埼玉県や北海道で始まっています。北海道では、栗山町で10年以上前から社会福祉協議会を中心に老人クラブや町内会で学習会を開催し、住民サポーターを作るという地域づくりを通した支援体制づくりを進めてきました。

 

〇北海道におけるケアラー支援の背景

・北海道内では、全国の自治体に先駆けて栗山町で社協を中心にケアラー支援が進められ、町ケアラー支援条例も2021年に制定

・道社協では、2022年度の重点事業にケアラー支援を位置づけ、ケアラー支援推進センターを設置、栗山町をモデルに具体的事業に取り組む

・同年度、北海道ケアラー支援条例が施行、道より道社協が事業受託、連携して取り組む

○ケアラー支援推進センターの目的

市町村社協のネットワークや(一社)日本ケアラー連盟との連携のもと、ケアラー支援体制(ケアラー支援の普及・啓発、ケアラー支援専門職の育成、地域づくりを通したケアラー支援体制)の構築に取り組む

○センター運営委員会

学識経験者、相談支援機関、行政、市町村社協、当事者及び当事者組織、労働関係(介護離職関係)でコアメンバー会議を設置(コアメンバーは全道的な支援や各関係機関の専門職が担う地域アドバイザー支援を行う)、地域アドバイザーによる市町村の研修時ファシリテーター支援、ヤングケアラーコーディネーターの設置

○北海道におけるケアラーの実態
2021年高齢者及び障がい者のケアラーに相談機関が対象者を選定し、調査票による郵送回答
◆高齢者を世話しているケアラー
・お世話で困っていること(ケアラー自身に関すること): 自分の心と体の健康、 介護疲れ・ストレス、 お世話を変わってくれる人がいない
・お世話することによる健康状態への影響:疲れがとれない、 体調を崩すことがある、睡眠不足である、気分が沈みがちである
・お世話をする人が必要と思う支援:いろいろな制度に詳しい 職員、何でも相談できる窓口
・あなたのかわりにケアしてくれる人:子、配偶者
◆障害者を世話しているケアラー
・ お世話で困っていること(ケアラー自身に関すること):自分亡き後世話をする人がいるのかという不安、自分の心と体の健康、介護疲れ・ストレス、お世話と仕事の両立
・お世話することによる健康状態への影響:疲れがとれない、 体調を崩すことがある、睡眠不足である、気分が沈みがちである
・お世話をする人が必要と思う支援:いろいろな制度に詳しい 職員、何でも相談できる窓口                                         ・あなたのかわりにケアしてくれる人:配偶者、障害福祉サービス事業者

○北海道におけるヤング ケアラーの実態
2021年公立中 2 年、全日制・定時制 高校 2 年に学校経由で依頼、web 回答
◆中 2
・ケアラー は 3.9% 、お世話する頻度はほぼ毎日が57%
・一日あたりの お世話する 時間 は 3 時間未満が 35% 、3 時間~7 時間 が 1 6%
・行っているケア(ケアの 相手 兄弟 、母 、祖母)                                                               兄弟の場合:世話 や 見守り 、感情面のサポート 、家事
母の場合:家事 、外出の付き添い 、感情面のサポート 、見守り
祖母の場合: 外出の付き添い、見守り 、感情面のサポート 、家事
・ いつから:就学前から 1 3% 、 小学生の時から 7 2%
・ 困っていること:自由になる時間がない 1 9% 、友だちと遊べない 1 5% 、勉強時間がとれない 1 0%
◆高 2 (全日制 /定時制)
・ケアラー は 3.0% /4.5% 、 お世話する 頻度は ほぼ 毎日 が 46%/ 37%
・一日あたりのお世話する時間は3 時間未満が 27%/ 12% 、 3 時間 ~7 時間 が 1 7%/2 5%
・行っている ケア (ケアの 相手:兄弟 、母 、祖母)
兄弟の場合:世話や見守り 、感情面のサポート 、家事
母の場合:感情面のサポート 、外出の付き添い、家事
祖母の場合:家事 、外出の付き添い、 見守り 、 感情面のサポート
・ いつから:就学前から 1 0% 、 小学生の時から 3 0%
・困っていること:自由になる時間がない 20 %/12% 、 友だちと遊べない 1 3 %/12%、 勉強時間がとれない 13 %/12%

調査結果からは、 学習面や友だちとの交流に支障がある ことで将来の希望 を あきらめることがないような支援や 、親に代わってケアをするのは子どもであるということをふまえると、当事者の子どもだけでなく親 、兄弟も含む家族まるごと支援が必要と考えます 。