原発コストと電気料金  いくらかより、だれが負担するかが問題!

2014年11月3日 21時37分 | カテゴリー: エネルギー, 人権, 市民自治, 活動報告, 環境, 防災

―立命館大学教授 原子力市民委員会座長代理 大島堅一氏―

原発は本当に安全?

事故は起こりうるものであり、絶対安全な原発が存在しないことは、推進派も十分に分かっている。日本はエネルギーに乏しいから原子力なのか?原子力は電源では3割だが、エネルギー全体では1割に過ぎない。再処理や高速増殖炉を核とする核燃料サイクルの実現がなければ有効なエネルギーといえないことは、原発推進派の中でも常識だ。

その核燃料サイクルは、実証炉を経て商業炉をめざすことになっている高速増殖炉もんじゅだが、20年経った今でも初期の段階である原型炉のままである。このもんじゅの維持には一日5,000万円使われている。

 

原発は環境にやさしいのか?

一方の使用済み核燃料の再処理によりできたMOX燃料も、再処理前の1割~2割しか効率よくならない。そこには1兆円かけられるにもかかわらず、9,000億円の価値しか生み出さない。そして再処理工場から排出される高レベル放射性廃棄物は、超長期にわたり危険物として保管し続けなければならない。

また、プルトニウムはすぐに核兵器として使用できるため、「余剰はもたない」という国際協定があるが、日本では現在48トン保有している。1トン当たり数百発の核兵器になるにもかかわらず、紙1枚で放射能を防げるため簡単に持ち運びができることから、テロリストに狙われやすい。

さらに、電力会社のHPにはいまだにCO2の排出量や原発の発電コストが他の電源より優位であることがうたわれている。

 

原発は安いのか?

原発の(電源)コスト=発電コスト+社会的費用

発電コスト:建設費、燃料費、運転・保守費、使用済み核燃料の処理・処分費など

社会的費用:事故リスク対応費用や政策費用(事故の処理費用、安全対策費用、再処理技術などの開発費用、立地自治体への対策費用など)

海外では原発のコストが1基当たり1兆円といわれるのに、日本では4,000億円といわれるのは、発電コストしか対象としていないからだ。

原発の資産価値が2.3兆円といわれているのに対し、安全対策費用に2.2兆円、核燃料サイクルのもんじゅには年間200億円、田中角栄元総理が考案した立地対策費用には1基あたり1,400億円かけている。しかも使用済み核燃料の処理には10万年かかるといわれており、現在のところ300年分しか計算されていない。いずれを考えても経済合理性があるとはいいがたい。

民主党政権下で初めてコスト等検証委員会が設置された。これは原発をはじめとする電源のコストを検証する委員会で、社会的費用を世界的にも初めて本格的に評価したという意味で画期的なものだった。具体的には40年間の発電コストを40年間の総発電量で割って算出している。

原子力、石炭火力、LNG火力、一般水力を発電コストのみで比べると、石炭火力が最も低コストで原子力が続く。ただし、これに社会的コストを加えると、石炭火力が最も低いのは変わらないが、原子力は2011年当時で8.9円と計算されているものの、その後の事故処理費用や安全対策費用など、いまだにどれだけかかるかわからないことを考えると、残りのLNG火力や一般水力と比べても低いとはいえない。

事故処理費用については、損害賠償は生活再建には程遠いものであるうえに、原状回復も除染、中間貯蔵施設、最終処分など、まだ先行きさえ見えない状況だ。廃炉に向けた取り組みも、汚染水の問題や燃料の取り出しと最終処分もいつになったら収束するのかわからない中、どれだけの費用がかかるか見えない状況だ。さらに、復興も道半ばとなっている。

 

この莫大な費用はだれが負担するのか?

事故処理費用については、20147月現在までの支出で約11兆円と計算されている。しかし、東京電力を破たんさせないことが2011年に閣議決定されているため、私たちが電力消費者として料金に上乗せという形での直接的負担と、国民としての税金からの間接的負担により補填されている。

電気料金は原発依存度が低い電力会社ほど値上げ率が小さくなっている。値上げの主な要因は燃料費の高騰だが、その内訳をみると、円安による単価の上昇が約6割、発電量の増大による増加が約3割となっている。アベノミクスによる円安効果をもろに受けているということだ。しかも、原発依存度が低い電力会社は、古い石炭火力発電所を高効率化する更新を進めてきたため、それも値上げ率を抑えることにつながっている。

 

画策されている原発保護

 

川内原発での動きを見ればわかるように、電力会社と立地自治体が安全を認定する当事者だけの問題として、再稼働を進めやすくしようとしている。また、現在無限である損害賠償責任を有限化し、限度額を超える部分は国民負担にしようとしている。さらには、これからの電力自由化によりコスト高の原発を廃止する場合の損失や、電力会社による出資や支援で賄われている再処理事業の維持を国民負担で行うことが検討されている。

 

 

 

「原発の稼働に経済優位性がある」というのが、推進派の主張だが、それらは原発が絶対に安全であるということを前提にしない限り成り立たない理屈だ。この絶対があり得ないことを福島が証明してしまったとともに、安全の確保に近づこうとすればするほどコストがかさみ、もはや経済優位性などというものは存在しないことはあきらかだ。仮に“優位性”という言葉を使うのであれば、それは私たち国民にとってではないことだけはあきらかだ。