インクルーシブ教育って?
「社会にある障害者に対する差別・偏見・先入観は、小さい頃から障害のある子とない子が分けられて育ち、お互いを知らないことから生じる」という考えのもと、子どもたちが生まれ育つ地域で、どんな子も排除しないインクルーシブ教育の実現に向けて取り組んできた人たちがいます。
先日、日常的に酸素吸入器を使用し、車椅子で移動する海老原宏美さんが代表の「東京インクルーシブ教育プロジェクト」との意見交換会があり、本来のインクルーシブ教育や現在の日本の教育制度の課題などお聴きしました。(インクルーシブとは「包括的な」 「包み込む」という意味です。)
★障害者権利条約とは
○2006年に国連で採択、差別の定義(区別、制限、排除、合理的配慮をしない)を明記
○日本は条約批准のために国内法を整備
○24条(教育条項)で締結国は次のことを確保するとされている
・障害を理由に教育制度から排除されないこと
・障害者が他の人と平等に生活する地域社会において初等中等教育の機会を与えられること
・個人に必要とされる合理的配慮が提供されること
・障害者が必要な支援を教育制度一般の下で受けられること
・学問的及び社会的な発達を最大にする環境において完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること
○24条でいうインクルーシブ教育とは
・すべての学習者の基本的人権。児童の場合、親や養育者の権利ではない。親の責任は児童の権利に従属する。
・すべての生徒の福祉を重視し、彼らの固有の尊厳と自律(自主性)を尊重し、個人のニーズと効果的に社会に参加し貢献する能力を認めるという原則
・他の人権を実現する一つの手段。障害のある人が貧困から脱し、地域社会に完全に参加する手段を得、搾取から保護されることを可能にするために主要な手段。インクルーシブな社会を実現するための主要な手段
○インクルーシブってこういうこと(それぞれの違いを理解することが重要)
排除:一定の規律から外れる子は就学免除、猶予
分離:特別支援教育ニーズのある子のみのために一般の学校とは別に特別支援学校・学級を設置
統合:現学校システムについていける障害児は通常学級に入れる
インクルージョン(共生):どんな支援ニーズがある子でも地域の通常学級に在籍し、そのニーズに対応するために教育環境を調整する
★日本の教育のしくみ
○中央教育審議会:文部科学大臣の諮問に応じて最重要施策について審議し、大臣に以下を建議
・共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築
小中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要である。
・就学先決定のしくみ
就学先決定後も柔軟に転学できることが重要
・学校間連携の推進
特別支援学校は、小・中学校等教員への支援、特別支援教育に関する相談・情報提供などセンター的機能を有している。
・交流及び共同学習の推進
障害のない児童生徒にとっても多様性を尊重する心を育むことができる。
○多様な学びの場=分離
通常学級:現在の学校教育システムについていける障害者は入りやすいコース
特別支援教室:知的障害はないけど通常学級になじみにくい子が選べるコース
特別支援学級:軽度の知的障害や発達障害はあるものの、通常学級の健常児に受け入れられやすい子が選べるコース
特別支援学校:1-2度の身体、知的障害の子が教育委員会に強烈に勧められるコース
○教育での分離が招くもの
・はじめの分離が一生の分離のはじまり
→放課後等デイサービス、作業所、グループホーム、施設入所
・早期療育→発達保障→健常者に近づく訓練
→初めから社会が障害を受容していればいいだけのこと
・社会性は社会の中でしか身につかない
→分離されて社会性が身につかず、他者との関係もうまくいきにくい
・レールに乗せて安心なのはだれ?
→親や支援者主体から本人主体へ
○今こそ地域の学校へ
特別支援学校では特別支援教育のノウハウを積み重ねてきた
しかし条約では「場を分けちゃダメ」、「既存の学校システムを改革しなさい」といっている
→今こそ、特別支援学校の役割を「地域の学校」に還元するとき
○あくまで特別支援教育は必要
計算は計算機の使い方を教えてくれれば、字を書くことよりタブレットが使えればよかった・・・
障害者だけが「特別」なのではなく、すべての子の「個別ニーズ」に寄り添う「個別支援」でいいのでは
もちろん、私もあります「個別ニーズ」。