女性差別は人権問題

女性差別撤廃条約実現アクションより

「女性差別撤廃条約」は1979年の国連総会で採択され、日本は1985年に批准しました。しかし、いまだに医大入試における差別や実父による性暴力への無罪判決など、納得できないことばかりです。さらに、この度のコロナ禍では、外出自粛による家事育児負担の女性へのしわ寄せやDVの増加など、日常的な課題が見える化されたと感じます。

清瀬市では2006年から市の男女平等推進条例が施行され、性別による差別的取扱を受けたときなどに申し立てができる苦情処理委員会が設置されています。市の男女平等推進プランにもかかわっていただいた早稲田大学名誉教授で条約の実現アクション共同代表でもある浅倉むつ子さんの講演を紹介します。

 

 

◆女性差別撤廃条約とは

・固定化された性別役割分業の変革=法律上だけでなく、社会習慣の修正も

 

◆条約の理念を実現するための選択議定書

・慣習を変えないと実現できないと言われてきたが、20年経ても変わらない→強制力が必要と判断され→同条約の選択議定書が1999年国連総会で採択

 

◆選択議定書で何ができるか

・個人通報制度:個人又は集団が、条約で保障された権利の侵害を女性差別撤 廃委員会に直接申し立てをすることができる(ただし、日本の場合は最高裁判決でも救済されない場合)

→委員会が内容を審議し、国に「見解」や「勧告」(国に対する損害賠償、公的謝罪、法曹に対する研修の実施など)を出す

・法的拘束力はないが、国内法が改正された国もある

 

◆個人通報制度の実情

・2020年1月までに40カ国で155件受付、うち32件が条約違反

 

◆日本における選択議定書

・2020年7月現在、締約国189ヵ国中114ヵ国が批准

日本はまだ批准していない

○日本政府の立場

・20年間研究会を重ねているが、なお検討課題とされている

「選択議定書の受け入れにあたっては、司法制度や立法政策との関連での問題がある」との見解

・第4次男女共同参画基本計画において「女子差別撤廃条約の選択議定書の早期締結について真剣に検討を進める」とされていたが、2021年からの計画期間となる第5次計画でも同じ内容が記載されているだけ

○日本の司法は

・日本の裁判所は、「条約の内容が裁判所を拘束するためには条約に具体的、直接的に適用可能な文言が必要」としている→2013年の夫婦別姓訴訟の判決においても、「女性差別撤廃条約は国民に直接権利を付与するものではなく、直接適用や自動執行力があるとは認めることができない」と述べられている

○日本が選択議定書の批准で変わること

・日本が人権を尊重する国であることを世界に向け発信

・男女平等社会の実現につながる

・司法判断に条約の精神が活かされることにつながる

 

そもそも条約を批准していない米国や、ヨーロッパには人権裁判所があり、州や国の裁判所で救済されない場合、ここに提訴できるそうです。一方、日本をはじめとした、アジアにはこうした制度がないということで、この選択議定書はこうした国にこそ重要と言えます。

さらに、選択議定書の批准でSDGsにおけるジェンダー平等の実現にむけても、日本が人権を尊重する国であることを世界に発信することにつながります。