高齢期の住まい方

新宿区戸山ハイツの暮らしの保健室

荒川区などで訪問介護事業所、小規模多機能型居宅介護事業所等を運営する特定非営利活動法人東京ケアネットワーク副理事長小山政男さんの学習会を紹介します。

小山さんは、約10年、自治労で社会福祉・医療保健と民間中小労組を担当されたということで、「介護人材の不足と介護人材の確保・育成のあり方について」のテーマで話された中で印象的だった内容を抜粋しました。

 

 

新しい「住まい」自宅、施設以外の多様な「住まい方」の実現

「住み替えという選択肢」

・家屋の構造が要介護高齢者の生活に適さず、自宅に住み続けることが物理的に困難である場合や、一人暮らしである等の理由から日常生活の面などで自宅での生活に困難や不安のある高齢者の場合、適切なサービスを利用することができたとしても、そうした自宅での生活を続けることは困難である。このため例えば、バリアフリー、緊急通報装置などを備えた、高齢者が安心して住める「住まい」を用意する。

・早めの住み替えに対応するものとして、「高齢者向け優良賃貸住宅」

・要介護になってからの住み替えとして、「認知症対応型グループホーム」「特定施設」

・社会資本としての住まい

新しい「住まい」の在り方を検討する際には、ケアの受け皿として、また人間の尊厳が保持できる生活空間として、最低限求められる水準が確保されていることが必要である。劣悪な住環境、仕切りひとつの個室まがいの空間では、尊厳ある生活を送ることは困難である。

介護における「場」の意味
・物理的な空間配置…日常的な生活空間に利用者個々人のなじみの家具や調度品がしつらえてある、日中活動をする場で、歩き回る動線や並べている家具や用具が、邪魔にならず適度に手で掴んで心地よく使える道具となっているなど
・介護職員の立ち位置…ケア提供者の側が何かすべてをしてあげるケアではなく、相手を見守 り、相手の力を信じて場を共に作る姿勢が大切
・構成メンバー…生活する個人をケアし支援する場として日中生活を過ごす施設であっても、 職員の専門性や援助の適正な能力を持っていることだけではすまない場面はいくつもあり、専門職だけにこだわらない多様なメンバー構成での場づくり

地域包括ケアにおける介護人材に求められる資質
「地域におけるケアは介護職と利用者の1対1のケアではなく、1人の人の周囲からできる範囲内で少しずつ助ける仕組みをどう作るかということ」

「自宅でない在宅」を目指して、空間・時間・人
外山義(とやまただし)著「自宅でない在宅~高齢者の生活空間論~」より
・「在宅か施設か」という二元論の中間に、たしかに「自宅でない在宅」というものがあろう。しかし著者は、むしろ中間というより、高齢者の居住が施設と在宅とに二極分解していく構図のなかで、それを止揚する立体的なオルタナティブ(alternative:他にとりうる道)として「自宅でない在宅」を積極的に位置づけたいと思う。
・それはたんに、住む場所の問題ではない。たとえ住みなれた自宅を離れて施設に移ったとしても、再び個人として生活領域が形成され生命力が萎むことがないのなら、施設も「自宅でない在宅」でありうる。
・ポイントは、そこが処遇の場なのか、生活の場なのか、である。それは職員と高齢者の関係を見ればわかる。高齢者が一方的にケアを受けるような「垂直な関係」か、一人の市民として 住んでいる「水平の関係」か、である。
・ユニットケアが成り立っているのかのチェックポイント
時間がゆったり流れているか
「生活のかたち」が保たれているか
場が成立しているか
利用者が主役になっているか

どこに暮らしても周りの人と対等な関係でその人らしく過ごすことをあたりまえにする。人が暮らす上での基本であり、年齢に関係ないはずです。