新しい家族のカタチ 里親制度
何らかの理由で親と生活ができない子どもを保護者に代わって養育する社会的養護を必要とする子どもは、全国で 4 万人を超えています。川崎市養子縁組里親フォスタリング(里親養育包括支援)事業を受託している、かわさき里親支援センターさくらの講演を紹介します。
〇社会的養護の担い手
・里親 (養育者の住居に4人以下の子どもを迎え入れ養育する)
・ファミリーホーム (養育者の住居に里親と養育補助者が5~6人の子どもを迎え入れ養育する)
・乳児院 (0歳から2歳までの子どもたちを養育する施設)
・児童養護施設 (3歳から18歳までの子どもたちを養育する施設)
・その他の児童福祉施設(児童心理治療施設、児童自立支援施設、自立援助ホーム、母子生活支援施設)
○里親の必要性
・ 特定の大人との愛着関係の下で養育されることにより、自己の存在を受け入れられていると
いう安心感の中で、自己肯定感を育むとともに人との関係において 不可欠な基本的信頼感を
獲得することができる
・適切な家庭生活を体験する中で、家族それぞれのライフサイクルにおけるありようを学び、
将来家庭生活を築く上でのモデルとすることが期待できる
・家庭生活の中で人との適切な関係の取り方を学び 、身近な地域社会の中で必要な社会性を養
うとともに 、豊かな生活経験を通じて生活技術を獲得することができる
○安定した愛着関係が築かれると…
・人を信頼できる→安定した人間関係の土台になる(幼稚園や学校の先生、友達関係など)
適切に要求に応えてもらった子は、相手にも適切に自分の思いを伝えられるようになる
・自己肯定感が育つ→泣いたら応えてくれる=自分は安全だ!という気持ちが育つ
不安な時も、安心させてくれる存在があると、やってみよう!という気持ちが育つ
○愛着障害とは
特定の人との愛着が形成されず、情緒や対人面に問題が起こること
▼反応性愛着障害…5歳までに発症し、対人関係のパターンが持続的に異常を示すこと
・養育者への安心や慰めを求める為に、抱き着いたり泣きついたりすることがほとんどない
・笑顔が見られず、無表情。他児に興味を示さない
▼脱抑制型愛着障害…5歳までに発症し、周囲の環境が著しく変化しても持続する異常な社会的機能の特殊的パターン
・知らない人に対して、何のためらいもなく近づく。知らない大人に抱き着く
・自分に目を向けて欲しいが為に、不注意や乱暴な行為に走る
○ 特別養子縁組とは
・子どもの福祉の増進を図るために、養子となる子どもの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子として、新たな親子関係を結ぶ制度
・養親になることを望む夫婦が家庭裁判所に請求を行い、要件を満たした場合に、家庭裁判所から決定を受けることで成立
○求める里親像
・社会的養護の子どもたちの正しい理解→血のつながらないハイリスクな社会的養護の子どもを戸籍に入れて一生育てる覚悟が必要。障がいがわかったとしても、途中でギブアップはできない
・子どものルーツの保障→子どもが知りたい!と発信してきた時からライフストーリーワーク・真実告知を実施する。里親側の不安を解消するためではなく、子どもの知りたい気持ちに合わせて行うという認識が大切 *ライフストーリーワーク:自身の生い立ちや家族との関係を整理し、過去・現在・未来をつないで前向きに生きていけるよう支援する取組み
○かわさき里親支援センターさくらの里親養育包括支援
・里親制度の普及啓発
・養子縁組里親のリクルート
・養子縁組里親への研修
・候補児と里親家庭とのマッチング(候補里親リストの作成)
・養育相談支援
養子縁組家庭に関するアンケート調査では、「養子として育つ子どもたちの幸福度は一般家庭よりも高い」という分析結果が出た一方、「嫌な思いをした」のは学校生活の中で多いことがわかったそうです。そのため、学校の先生方と事前に話し合っておくことで、子どもを傷つける場面をできるだけなくすことが大切ということでした。だれひとり取り残すことなく幸せになってほしいです。