ヤングケアラーに寄り添うために
神奈川県立保健福祉大学実践教育センターの公開講座として行われた関東学院大学・大学院教授青木由美恵さんのお話を紹介します。
〇ヤングケアラーの背景
・ライフの中にはケアが含まれている。大人が大変だと子どもも大変
・ケアニーズや就労時間が増加⇒ケアへの子どもの負担の増加=子どもの権利を手放さざるを得ない子どもたち
・高校生の20人に1人がヤングケアラー、定時制はさらに比率が高い
・ケアの対象:幼い兄弟や身体障がい・精神障がい・依存症の親、高齢の祖父母
・望むこと:自分の時間がほしい(2割)、特にない(4割)
・ヤングケアラーという自覚あり2%、相談していない6割
○ヤングケアラーの気持ち
・自分がかかわることで家族が安定していることを感じる⇒自負をもっている
・自分より大変な親のことを考え、自分だけ楽しむことに罪悪感をもつ
・人と違うことに対して劣等感をもつ⇒ヤングケアラーと思われたくない、同情されたくない、でも認めてほしいと言う気持ちも
⇒ケアが長期化することで、困難があることがケアのためなのか自覚できない
○ヤングケアラーへの影響
・孤独を感じる、学業との両立に困難、親の病気や真実がわからず誤解し自分を責め成長に影響を及ぼす、ストレスで体調不良に
・大学生になると役割負担が重くなり、パニック障がいなどにも
・いつまでこの状態が続くのか、将来の選択肢(就職・結婚)への影響
・年齢の割に生活能力を身につけている、病気や障がいへの理解が深い
・家族のケアについてはプロ、聞き上手、思いやりがある、忍耐強い
○自治体によっては開始されているヤングケアラー支援
・ホームへルプサービス、認知症ケアの充実、小学生向けパンフレット、相談、居場所
○英国のヤングケアラー支援(対象:5歳~25歳くらい)
・1995年介護者支援法、2014年子どもと家族への支援法、ケア法
・介護者手当:16歳以上週35時間で週15,000円程度、16歳未満はソーシャルワーカーと話し、介護される人と一緒に状況を評価
・それぞれの支援:学校/宿題の手伝い、居場所 地域/イベント、ヤングケアラー向けのキャンプ ケアラー支援センター(支援団体)/アセスメント*、仕事や学業との両立支援 *アセスメント:客観的に状況を評価・分析すること
・支援内容:定期的な面談、自己理解を促す、レスパイト、家族全員での外出、ペアレントプログラム、緊急時の計画、教育・就業のサポート
・考え方:本人と家族のニーズを満たすサービスをつくる
子どもだけでなく、親自身が自分を大切にすること/SNSなどにずっとつながらなくても大丈夫/外の空気を吸っているか
○支援を考える際の前提
・子どもの権利を前提に年齢や成長度合いを考慮
・居場所:対話/共有/相談
・よりそい:子ども自身が自分の人生を生きる力をつける
・負担軽減:家庭の資源とされることからの解放⇒社会資源の不足の解消
大人の困りごとが減れば、子どもの負担が減る、ケアを要する人への支援を手厚くする
・啓発:ヤングケアラーを知り、社会の意識を高める
○介入時のポイント
・ヤングケアラーに気づく人:教員
・発見した人が初期介入(顔の見える関係がある人)
・アセスメント:北海道教育委員会ヤングケアラー支援のガイドライン参照
・家族全体へのアプローチ
・伴走支援(切れない)
・個人情報の共有に関する同意
“ヤングケアラーはかわいそうな子ども”という誤った見方がされていると感じていましたが、子ども自身も「そう思われたくない」ということが改めてわかりました。ケアは生きていく上で欠かせないものであるにもかかわらず、見えにくいため社会全体の意識を高めることが重要と考えます。